あけましておめでとうございます。
無線工学と法規の「新しい」解説、
最近やってませんが、これからも細々と続けていく気なので、
ことしも、よろしくおねがいします。
ってことで、続き。
今、電波の伝わり方の話をしています。
電波の伝わり方は、教科書
P105によくまとまっていています。
つまり、大きく分けて、地表波、電離層波、それと、対流圏波などのその他の伝わり方があります。
地表波は近距離しか伝わらないです。
高い周波数(VHF以上)はこの伝わり方。
電離層波は電離層で反射して伝わる。
電離層にはD層、E層、F層の3種類ある。
D層は、夜、中波を反射する。
ってことまでは、前回書きました。
今回付け足す情報は、
短波帯は、F層で反射される。何回も反射され、地球の裏側まで聞こえる
→アンデスの声というエクアドルの放送局は、日本でも聞こえる。
VHF(超短波)帯は、スポラディックE層(Es層)によって、ごくまれに!
反射されることもある
→50MHz帯では、このため、まれに遠くとQSOできることがあり、
そういうときのQSLカードは貴重だったりする。
→多分、東京だとEsが出ない、通常の通信だと、2エリアぐらいまでかなあ?最高?
これより上、UHF帯とかは電離層では反射しない。
そこで、月まで行って反射させるEME通信というのが、アマチュアの場合できる。
さて、ここで問題。
■問題 全国に放送したいとき、どの周波数帯を使う?
VHF以上は、常時つながるわけではない。
中波は夜つながらない
・・・・ってことは、短波を使う?
ぶぶ~。日本において短波を使っている放送局
(コンテンツを作っているだけではなく、アンテナが日本にある放送局)は
の2社だとおもう。
このうち、Radio Japanは海外向け放送。今はわからないけど、
昔は、受信報告書を送ると、「サービスエリア外のため、ベリカードを送れません」
みたいなカードが来た。
で、他の局は、各地方で、地方局がローカル向けに「同じ番組を」放送することによって、全国放送を実現している。これが「全国ネット番組」。
■なぜ、短波を使わず、全国ネット番組にするのか?
この理由。テレビなら明確。
テレビ(動画)は、短時間にめちゃくちゃ大きなデータを流さないといけない。
多くのデータを流すには、広い帯域幅がいる。
電波を送るには、搬送波が必要で、搬送波の「あたりに」信号で利用する帯域がくる。
たから搬送波は帯域幅より高くないといけない。通常は、何局も同時に流すため(帯域が混ざると混信するので、搬送波は混ざらないように)すっごく高い搬送波周波数を使う。
具体的にいうと、テレビはVHF以上の周波数帯を使う。
短波帯は使えないので、全国放送するには、各地方局が同じ番組を流す「全国ネット放送」になるわけ。
では、中波のラジオは?
NHKは、地方によって中波も周波数を変えて同時放送して全国放送している。
短波帯に1つ周波数を設ければいいのでは?
なぜ、短波を使わず、全国ネット番組にするの?
受信料の無駄づかい?
■短波は伝わらない場所がある
そうじゃない。
短波には伝わらない場所がある。
短波は、近距離は(ほかの周波数帯同様)地表波で通じる。
遠くへは、電離層反射(F層)で通じる。
しかし、地上波では遠すぎて届かないへど、電離層で反射してくるには近すぎて届かないというエリアができてしまう。このエリアを不感地帯(スキップゾーン)と言います
また、電離層で反射して入感できる最短距離を(本当の定義はちょっと違う)跳躍距離といいます。
つまり、
地表波で入力できる最遠距離<不感地帯<跳躍距離
となります。
短波では、この不感地帯ができてしまうため、「あまねく放送を広げる」必要のあるNHKは、短波帯で全国放送を行わず、ラジオも中波で、不感地帯ができないように近接してラジオ局を開設しています。
■短波の音は…
また、短波帯は遠くの局の場合、電波が違ったところからほぼ同時に伝わることがあります。
例えば、南米の放送局を日本で聞いた場合、
太平洋を渡ってくる波と、
大西洋を回って大陸経由でくる波
の2つが同時にきます。この結果、波が合成され、強弱がつく音になります。
フェージングと言います(フェージングの理由はこれ以外もありますが、今回は省略)。
これがすごいと、音楽聞きづらいです。
また、短波きいてると、「ぶわー」とものすごいノイズが聞こえることがあります。
これは、敵国の放送を国民に聞かせたくないときに流す妨害電波です。
「ジャミング」といいます。
フェージングやジャミング、そのたもろもろ短波ではあふれていて、
音的には・・・・
ってことで、短波は全国放送には使われにくいわけです
■時間や季節によって、周波数は…
短波は、波長を短くすると、どこかで電離層のF層反射をしなくなります(VHFはF層で反射しない)
電波を垂直に投げて、反射しなくなる周波数を「臨界周波数」といいます
実際には斜めに電波が電離層にぶつかると、臨海周波数よりも高い周波数でも反射します。とはいえ、無理くり反射させるにも限界があって、その限界(=電離層反射する最高の周波数)を、最高仕様周波数(MUF)といいます。
最高だけでなく、最低にも限界があります(中波は昼間は電離層反射しない)。これが、最低使用周波数(LUF)です。
つまりまとめると、
最低使用周波数(LUF) < 臨海周波数 ≦ 最高使用周波数(MUF)
です。
臨界周波数と最高使用周波数の間には、以下の関係があります
最高使用周波数(Fmax)=臨界周波数(fc) X secΘ
secとは1/cosのことです。
またLUFとMUFは時間によって異なり(中波が夜電離層反射する=LUFは夜中なくなる)一番放送に向いている周波数である最適使用周波数(FOT)は、MUFの85%と言われます。
つまり、動きます。
アマチュア局と違い、放送局は周波数固定です。
自分の使っている周波数が時間によって、最適になったりならなかったりっていうのは、商売上困ります。
そんなこんなで、全国放送に短波帯が選ばれにくいわけです
今回はここでおしまいです。
次回は電波の伝わり方の残りのお話。